Interface編集部
2025年3月号特集「仕事のための生成AI」第6部サポート・ページ
第6部 実機でローカルLLM活用
第1章 ラズパイ×ローカルLLMで作る音声会話システム インストール方法
このページは,Interface 2025年3月号 第6部 実機でローカルLLM活用 第1章 ラズパイ×ローカルLLMで作る音声会話システムの環境を構築する手順を記述しています.
システム構築に必要な機器・OS
本システムを構築するために必要な部品を表1にまとめました.この一覧を参考に,各部品を準備してください.一部の製品は入手が難しい場合もありますが,まずはお手元の部品を活用して試してみてください.
表1 必要な部品
No | 機器名 | 説明 | 商品名(例) |
1 | Raspberry Pi Zero 2 W | 本体 | Raspberry Pi Zero 2W |
2 | Raspberry Pi OS(64bit) | Release date:October 22nd 2024 System:64ビット Kernel version:6.6 Debian version:12 (bookworm) Size:438Mバイト |
– |
3 | microSDカード 64G SDXC V30 U3 A1 | 出来るだけ高速の物が良いが,A2は必要ない | microSD カード 64GB UHS-I U1 Class10 Ultra SDSQUAB-064G-GH3MA(サンディスク) |
4 | ACアダプタ | 電源供給用.安定した5V 2.5A以上の電力が供給できることが重要 | Raspberry Pi 用ACアダプターmicro b(smraza) |
5 | 大容量モバイル・バッテリ | 出力 5V 3A 対応程度のバッテリ.運用時には,本体と合わせてぬいぐるみなどに入れる | モバイルバッテリー5000mAh(大創産業) |
6 | USB-HUB (Micro-B対応) |
Raspberry Pi Zero 2 WにはUSBポートが1つしかないため,複数のデバイスを接続するために必要 | 有線LAN搭載 3ポートOTGハブ バスパワー専用 RUH-OTGU3HE(ルートアール) |
7 | USBオーディオ変換アダプタ | 音声入出力用として使用する.マイクとスピーカ(ヘッドフォン)が接続できるものを選ぶ | USB – 3.5mmオーディオアダプター 外部ステレオサウンドカード デュアルTRS 3極 3.5mm ヘッドフォンとマイクジャック(ENVEL) |
8 | マイク | USB-Audioに接続する.2端子か3端子等の違いがあるので,USB-Audioを確認して使用すること | マイクロフォンミニクリップ ブラック有線マイク3.5mmジャックミニ有線クリップオンラペルハンズフリーコンデンサーマイク(ROSEBE) |
9 | スピーカ | 一般的にUSB-Audioの出力は低いので,アンプ内蔵の物を選ぶとよい | USBミニスピーカー(キャンドゥ) |
10 | USBイーサネット変換アダプタ | インストール時に使用する.Wi-Fiを使用することもできるが,システム構築時には有線LANを使用する方が安定した設定が可能 | PH-RTX3060-12G-V2(ASUS) |
11 | USBキーボード | インストール時に使用する.SSH接続後はPCのターミナルからリモート操作することが可能 | – |
12 | ディスプレイ | i初期設定を行う際に必要.HDMIやコンポジット対応のモニタを使い,インストールが終わればSSH接続に切り替える | – |
13 | WindowsPC (OS:Windows11) |
CPU:AMD Ryzen 5 3600 以上 メモリ:32Gバイト以上 SSD:100Gバイト以上の空き容量 |
– |
14 | GPU | RTX3060相当以上 | – |
システム設定およびサービスのインストール
今回は,ラズパイとPCの両方にDockerサービスをベースとしたシステムを構築します.また,PCではGPUの設定も行います.既に設定を済ませている方も,設定内容を確認しながら進めてください.
なお,操作手順については,2025年2月号掲載 第3部 ラズパイ×Dockerでシステム構築を一部省略して簡潔に記載しています.詳しい説明が必要な場合は,2025年2月号の記事を参照してください.
● ラズパイの設定
次の手順でラズパイの設定を進めます.
1,microSDカードにOSイメージを書き込む
2,ラズパイにラズベリー・パイOSをインストールする
3,Swapサイズの拡大とSDカードアクセスの高速化
4,USBオーディオ・デバイスおよび必要なソフトウェアをインストールする
5,Dockerサービスをインストールする
6,MIKEインストール・ファイルを展開する
各ステップを順番に進めることで,システムの基本構成が完成します.
▶インストール時の構成とSSH設定
Raspberry Pi Imagerを使用する際に,OSイメージを書き込むと同時に,SSHの有効化やユーザ・ネットワーク設定を事前に行うことが可能です.
ただし,これらの設定を行った場合でも,初回起動時にはキーボードやディスプレイを接続し,手動で初期設定を行うことをおすすめします.理由は,ネットワークやSSH設定に誤りがある場合,そのままでは接続や操作ができなくなる可能性があるためです.
インストール後,OSを起動してからraspi-configを使用し,設定内容を確認・調整しながら進めることで,トラブルを未然に防ぎつつ環境を整えることができます.
▶セットアップ手順
1,Raspberry Pi OSのダウンロード:https://downloads.raspberrypi.com/raspios_lite_arm64/images/
ダウンロードするOSのイメージファイル:raspios_lite_arm64-2024-10-28/2024-10-22-raspios-bookworm-arm64-lite.img.xz
Raspberry Pi ImagerでSDカードに書き込みます.
2,ラズパイにSDカードを指し,起動します
raspi-configを使って,SSHを有効にします.
システムのアップデートとカーネルとファームウェアの更新を停止します
$ sudo apt update⏎
3,Swapサイズの拡大
ラズパイにてSWAPファイルをリサイズします.
$ sudo dphys-swapfile swapoff⏎
$ sudo vi /etc/dphys-swapfile⏎
—————
# set size to absolute value, leaving empty (default) then uses computed value
# you most likely don’t want this, unless you have an special disk situation
# CONF_SWAPSIZE=200
CONF_SWAPSIZE=1024
—————
$ sudo dphys-swapfile setup⏎
$ sudo dphys-swapfile swapon⏎
$ sudo reboot⏎
再起動後確認します.
$ sudo swapon –show⏎
—————
NAME TYPE SIZE USED PRIO
/var/swap file 1024M 0B -2
—————
4,SDカードアクセスの高速化対応について
使っているSDカードの性能に依存しますが,場合によってはストレージへのアクセスを高速化できる可能性があります.
注:この設定はあくまでも自己責任で行う必要があります.
$ sudo vi /boot/firmware/config.txt⏎
——–追加——-
dtparam=sd_overclock=100
——————–
注:docker push等でデータ・エラーが発生するようであれば,設定を戻してください
(参考)https://zenn.dev/kobayutapon/articles/a13fd3d0164420
高速化対応のベンチマーク比較
・高速化前
pi@mike:~ $ dd if=/dev/zero of=benchmark bs=64K count=32K conv=fdatasync⏎
32768+0 records in
32768+0 records out
2147483648 bytes (2.1 GB, 2.0 GiB) copied, 114.479 s, 18.8 MB/s
pi@mike:~ $ dd if=benchmark of=/dev/null
4194304+0 records in
4194304+0 records out
2147483648 bytes (2.1 GB, 2.0 GiB) copied, 105.051 s, 20.4 MB/s
・高速化後
pi@mike:~ $ dd if=/dev/zero of=benchmark bs=64K count=32K conv=fdatasync⏎
32768+0 records in
32768+0 records out
2147483648 bytes (2.1 GB, 2.0 GiB) copied, 89.5343 s, 24.0 MB/s
pi@mike:~ $ dd if=benchmark of=/dev/null
4194304+0 records in
4194304+0 records out
2147483648 bytes (2.1 GB, 2.0 GiB) copied, 57.0198 s, 37.7 MB/s
高速化の結果,書き込み速度は約1.3倍,読み出し速度は約1.8倍に向上しました.ただし,この結果はSDカード自体の性能に大きく依存します.
特に低速なSDカードを使用した場合,高速化の設定を行っても十分な効果は得られず,場合によってはSDカードにダメージを与える可能性があります.そのため,設定を行う際は慎重に進めてください.
5,USB-Audioの設定
① ラズパイの音声関連の入出力関連制御について
ラズパイの音声デバイス制御には,標準搭載されているALSA(Advanced Linux Sound Architecture)とUSB接続のオーディオデバイスを組み合わせて使用します.
② USB-Audioの確認
まず,USB-AudioデバイスをUSBハブに接続し,ラズパイにセットします.その後,次のコマンドでUSBに接続されているデバイスを確認します.
$ lsusb⏎
lsusbコマンドの出力にUSB Audio Deviceという内容のデバイスが表示されているか確認します.もし表示されない場合は,次の手順を試してください.
1:USB-AudioデバイスをUSBハブから抜き,再度差し込んでみる.
2:USB-Audioデバイスをセットしたまま,ラズパイを再起動する.
この後,lsusbコマンドで再度確認してください
③ USB-Audioデバイスの優先度の設定
ラズパイには,標準でHDMI経由のオーディオ・デバイス(snd_vc4)が実装されていますが,今回は使用しないため,USBに接続したUSB-Audioデバイスを優先的に使用する設定が必要です.
固定の優先順位の設定は,/etc/modprobe.d/alsa-base.confファイルを記述する事で行います.ファイルは初期状態では存在しないため,新たに作成します.
次のコマンドで編集を開始します.例ではviエディタを使っていますが,慣れたテキスト・エディタを使ってください.
$ sudo vi /etc/modprobe.d/alsa-base.conf⏎
—-入力—-
options snd slots=snd_usb_audio,vc4
options snd_usb_audio index=0
options vc4 index=1
————
④ 再起動してください.
$ sudo reboot⏎
⑤ 音声デバイスの確認
このコマンドの出力で,snd_usb_audioが0番として表示されていれば,USB-Audioデバイスが優先されています,もし設定が反映されていない場合は,設定内容を再確認し,もう一度再起動してみてください.
$ cat /proc/asound/modules⏎
—-出力—-
0 snd_usb_audio
1 vc4
————
次のコマンドにより,現在認識されているオーディオデバイスの一覧が表示されます.
$ aplay -l⏎
—-出力—-
**** List of PLAYBACK Hardware Devices ****
card 0: Device [USB Audio Device], device 0: USB Audio [USB Audio]
Subdevices: 1/1
Subdevice #0: subdevice #0
card 1: vc4hdmi [vc4-hdmi], device 0: MAI PCM i2s-hifi-0 [MAI PCM i2s-hifi-0]
Subdevices: 1/1
Subdevice #0: subdevice #0
————
出力結果にUSB-Audioデバイスが含まれていることを確認し,デバイス番号が優先順位とおりになっているか確認してください.もしcard 0が異なる場合は,設定に問題がある可能性がありますので設定の内容を再度確認してください.
⑥ USBマイクのデバイス確認(USBマイクの確認)
USBマイクの確認には,Linux標準コマンドarecordを使用します.このコマンドを使うことで,ラズパイに接続されたUSBマイクが正しく認識されているかの確認と,録音テストを行うことができます.
まず,USBマイク(USB-Audioデバイス)が接続された際に,どのデバイス番号として認識されているかを確認するには,次のコマンドを実行してください
$ arecord -l⏎
—-出力—-
**** List of CAPTURE Hardware Devices ****
card 0: Device [USB Audio Device], device 0: USB Audio [USB Audio]
Subdevices: 1/1
Subdevice #0: subdevice #0
このコマンドの出力結果には,接続されているオーディオデバイスの一覧が表示されます.該当するUSBマイクのデバイス番号を確認してください.この内容であればUSBマイクはカード番号0とデバイス番号0と表示されます.
⑦ 録音テストの実行
先ほどのarecord -lコマンドで取得したカード番号とデバイス番号を使用します.
次のコマンドでarecordを使用し,カード番号とデバイス番号を指定して音声を録音します.録音ファイルはtest.wavとして保存されます.
$ arecord -D plughw:0,0 -d 10 -f cd test.wav⏎
上記のコマンドを実行すると,CD音源仕様の10秒間の音声をtest.wavというファイルに保存されます.
⑧ 録音した音声の再生(USB-Audioによる再生)
録音が完了したら,録音内容を確認するためにaplayコマンドで音声ファイルを再生します.USB-Audioによる音声出力確認にもaplayを使用します.
$ aplay test.wav⏎
—-出力—-
Playing WAVE ‘test.wav’ : Signed 16 bit Little Endian, Rate 44100 Hz, Stereo
————
これで,USB-Audioデバイスによる音声出力が正常に動作しているかを確認できます.
⑨ 音量設定プログラム(alsamixer)による再生音量とマイク感度の設定
alsamixerは,音声入出力デバイスの音量や感度を調整するためのツールです.
⑩ マイクの感度設定
alsamixerで調整するマイクには,2極マイク(モノラル)と3極マイク(ステレオ)の2種類があります.USB-Audioの仕様および接続しているマイクの仕様に応じた感度設定を行ってください.
1,2極マイク(モノラル):Micで感度を調整.
2,3極マイク(ステレオ):Mic(L R CAPTURE)で感度を調整.
⑪ 設定の保存
調整が済んだら 設定を保存してください.
$ sudo alsactl store⏎
注:Auto Gain Controlは,マイクの感度を自動で調整する機能ですが,ノイズも増幅される可能性があるため,通常は無効にすることをおすすめします.手動で適切な感度を設定することで,ノイズの影響を軽減できます.
4,Docker サービスのインストール
参考:https://docs.docker.jp/linux/step_one.html
① Dockerをダウンロードしてインストールする
$ sudo curl -fsSL https://get.docker.com/ | sh⏎
② Dockerグループにユーザを追加:
$ sudo usermod -aG docker ${USER}⏎
③ 再ログインしてユーザ権限の確認
$ docker –version⏎
$ docker run –rm hello-world⏎
このコマンドでDockerが正常終了すれば成功です
● MIKE(ラズパイ)の展開
▶Docker用MIKEクライアント環境構築ファイル取得
Interface誌ダウンロード・ページより,Docker用MIKEサーバ環境構築ファイル(docker_mikeC_001.tar.gz)をダウンロードします.ダウンロードした docker_mikeC_001.tar.gzを/tmpにコピーし,新たに作成した,MIKE用フォルダ/opt/mike配下に展開します.
▶mike(ラズパイ)フォルダの構成
/opt/mike
├── LICENSE.txt
├── README.txt
├── julius_server/
| ├── docker-compose.yml
| ├── Dockerfile
| └── opt_mike
| ├── bin
| │ └── container-init.sh
| └── config
|
├── mike_server/
| ├── docker-compose.yml
| ├── Dockerfile
| └── opt_mike
| ├── bin
| │ └── mike_server.py
| ├── config
| │ └── commands.csv
| └── snd
|
├── mike_client/
| ├── docker-compose.yml
| ├── Dockerfile
| └── opt_mike
| ├── bin
| │ ├── config_handler.py
| │ ├── julius_handler.py
| │ ├── logger_handler.py
| │ ├── main.py
| │ ├── mike_client.py
| │ ├── speech_recognition_handler.py
| │ └── voice_recognition_interface.py
| └── config
| └── composition.json
|
├── mike_data/
| ├── docker-compose.yml
| ├── Dockerfile
| └── opt_mike
| ├── bin
| │ ├── config_handler.py
| │ ├── copy_voice.sh
| │ ├── csv_processor.py
| │ ├── file_handler.py
| │ ├── logger_handler.py
| │ ├── main.py
| │ ├── mike_data.py
| │ ├── mike_data.sh
| │ ├── server_settings.py
| │ ├── text_to_speech_processor.py
| │ ├── voice_converter.py
| │ └── voicevox_handler.py
| ├── config
| │ ├── config1.json
| │ ├── config2.json
| │ └── config3.json
| ├── dic
| ├── input
| │ ├── communication.csv
| │ └── mike.jconf
| ├── tmp
| └── voice
|
└── tools/
├── build_mikeC.sh
├── julius_make.sh
├── make_data.sh
├── mike1_start.sh
├── mike2c_start.sh
├── mike3c_start.sh
└── mikeC_stop.sh
● Windowsの設定
今回のシステムでは,Windows環境に次のプログラムをインストールします.
1,音声合成用プログラム:前回使用した VOICEVOX
2,応答判定用プログラム:ローカルLLMを活用したOllamaおよびOpen WebUI
3,プログラム制御用サーバ:MIKE(server)
これらのプログラムを効率よく動作させるためには,音声合成と応答判定が高速に処理される必要があります.そのため,ローカルLLMにはGPUを使用することを前提としています.
▶GPUの確認と最新のドライバのインストール
・GPUの確認
タスクマネージャーを使用することで,インストールされているGPUを確認できます.
GPUがRTX3060以上,GPUメモリが8Gバイト以上ある事を確認してください.
また,nvidiaのGPU確認コマンドnvidia-smi(The NVIDIA System Management Interface)によりGPUの詳細な状態を確認できます.
▶最新のGPUドライバのインストール
1,NVIDIAの公式サイトから最新のドライバ・バージョンを確認し,インストール・ファイルをダウンロードする
① 既に最新のドライバがインストールされている場合,更新の必要はありません.
② ただし,Docker環境でGPUが利用できない場合は,ドライバの上書き更新を試してください.この手順書を参考に進めてください.
2,適切なGPUドライバの選択
① NVIDIAのドライバには用途に応じた複数の種類がありますが,どれを選択しても今回のMIKEの実行には大きな影響はありません.
② 普段使っているものを選んでインストールしてください.
(参考)NVIDIA Appドライバの比較
https://www.nvidia.com/ja-jp/software/nvidia-app/driver-comparisons/#referrer=nvapp
3,インストーラを実行
① カスタムを選択します.
クリーン・インストールは必須ではありませんが,DockerとGPUが連携できない場合には,以前のGPU設定が干渉している可能性があります.他の方法で問題が解消しない場合は,ドライバ・インストール時にクリーン・インストールを選択してください.
② 必要なコンポーネントを選択します.
③ 終了
④ PCを再起動します.
⑤ 再起動後は,NVIDIAコントロールパネルを開き,ドライバが正しくインストールされている事を確認します.
⑥ nvidea-smiでインストールしたドライバが最新になっているか確認します.
▶ VOICEVOX
音声合成には,前回と同じVOICEVOXを使用します.
次の手順でインストールします.
1,VOICEVOXのサイトからインストーラをダウンロードして実行する
2,VOICEVOX(GUI)を起動して,正常にインストールできた事を確認します.
3,VOICEVOX(GUI)を終了し,ターミナルからVOICEVOXをサーバ・モードで起動させます.
PS> [VOICEVOXのインストール・フォルダ]\vv-engine\run.exe –host 0.0.0.0
(参考)GPUのメモリに空きがある場合は,–use_gpu を追加するとGPUを使用できるようになりますが,ollamaや他のGPUを使用するアプリを同時に実行すると動作が不安定になるので,システムの状態に合わせて実行してください.ちなみにCPUモードで実行しても,最新のCPUであればそれほど遅くはならないようです.
PS> [VOICEVOXのインストール・フォルダ]\vv-engine\run.exe –use_gpu –host 0.0.0.0
▶DockerDesktop
DockerDesktopを利用するには,Docker Coreサブスクリプションに従い利用してください.
(参考)
https://www.docker.com/ja-jp/pricing/
https://www.docker.com/ja-jp/pricing/faq/
・インストール準備と注意点
1,Windows機能の確認と設定
Linuxサブシステムと仮想マシンプラットフォームを有効にします.
注:変更後再起動が必要になる場合がります.
2,PowerShellの確認とインストール
最新のPowerShellがインストールされていることを確認してください.
PowerShellを起動したときに新機能と改善のために,最新のPowerShellをインストールしてくださいと表示された場合は,アップデートしてください.
インストール手順の参考:
https://learn.microsoft.com/ja-jp/powershell/scripting/install/installing-powershell-on-windows?view=powershell-7.4#install-powershell-using-winget-recommended
3,WSL(Windows Subsystem for Linux)の確認
PowerShellを起動しWSLコマンドでインストールされているバージョンを確認します.
> wsl -l⏎
WSLインストール直後は,Linux 用Windowsサブシステムには,ディストリビューションがインストールされていません.
ディストリビューションはMicrosoft Storeにアクセスしてインストールできます:
(参考)https://aka.ms/wslstore
WSL自体のバージョンを確認
PS> wsl.exe -v⏎
WSLにインストールされているLinuxのバージョンの確認
PS> wsl -l -v⏎
注:インストールされているLinuxのNAMEは環境によって異なります.
WSLがインストールされていない場合は,次のURLを参考にしてインストールしてください.
https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/wsl/install
4,DockerのHPからインストーラをダウンロードし,インストールを実行する
① https://www.docker.com/ja-jp/
② 起動したインストーラの[構成]ページでHyper-V の代わりにWSL2を使用するオプションが選択されているかどうかを確認します.
③ システムが2つのオプションのうち1つしかサポートしていない場合は,使用するバックエンドを選択できません.
④ インストール ウィザードの指示に従ってインストーラーを承認し,インストールを続行します.
⑤ インストールが成功したら,[閉じる]を選択してインストール プロセスを完了します.
⑥ PCを再起動します.
⑦ OSが起動した後にDocker Desktopを起動します.
5,docker-usersグループに追加
管理者アカウントがユーザ・アカウントと異なる場合は,ユーザをdocker-usersグループに追加する必要があります.
① 管理者としてコンピュータの管理を実行します.
② [ローカル ユーザーとグループ]→[グループ]→[docker-users]に移動します.
③ 右クリックしてユーザをグループに追加します.
④ 変更を有効にするには,サインアウトして再度サインインしてください.
(参考)https://docs.docker.com/desktop/setup/install/windows-install/
6,インストール確認
① WSLにdocker-desktopがインストールされている事を確認します.
② Wslの環境にもGPUドライバが反映されている事を確認します.
③ 次のコマンドでDockerとGPU連携の確認します
PS> docker run -it –rm –gpus all –runtime=nvidia nvcr.io/nvidia/cuda:11.7.1-cudnn8-devel-ubuntu22.04 bash
▶ollama環境の構築
次のコマンドでollamaをインストールします.(Docker環境)
PS>docker run -d –gpus=all -v ollama:/root/.ollama -p 11434:11434 –name ollama ollama/ollama:0.4.7⏎
(参考)https://github.com/ollama/ollama?tab=readme-ov-file
https://hub.docker.com/r/ollama/ollama
2回目以降の起動は,次のコマンドとなります.
PS> docker start ollama⏎
停止は,次のコマンドとなります.
PS> docker stop ollama⏎
▶open-webui
ollamaには,GUIツールとしてopen-webuiがあります.
次のコマンドでインストールします.(Docker環境)
PS> docker run -d -p 3000:8080 –add-host=host.docker.internal:host-gateway -v open-webui:/app/backend/data –name open-webui ghcr.io/open-webui/open-webui:0.4.8⏎
(参考)https://github.com/open-webui/open-webui
2回目以降の起動は,次のコマンドとなります.
PS> docker start open-webui⏎
停止は,次のコマンドとなります.
PS> docker stop open-webui⏎
open-webuiの使用方法については,本誌(2025年3月号)の記事を参考にしてください.
● MIKE(PC)の展開
▶ Docker用MIKEサーバ環境構築ファイル取得
Interface誌ダウンロード・ページより,Docker用MIKEサーバ環境構築ファイル(docker_mikeS_001.zip)をダウンロードして/tempにコピーします.
▶mike(PC)フォルダの構成
/opt/mike/
├─ LICENSE.txt
├─ README.txt
├─ mike_server/
│ ├─ docker-compose.yml
│ ├─ Dockerfile
│ └─ opt_mike/
│ ├─ bin/
│ │ ├ config_handler.py
│ │ ├ file_handler.py
│ │ ├ logger_handler.py
│ │ ├ main.py
│ │ ├ mike_server.py
│ │ ├ ollama_handler.py
│ │ └ voicevox_handler.py
│ └─ config/
│ └ config2.json
└─tools/
├─ build_mikeS.ps1
├─ mikeS_start.ps1
└─ mikeS_stop.ps1
トラブルシュート
● GUIモードでインストールしたら,UPDATERでフリーズした
間違っても,RaspperryPi Zero 2 WにGUIのOSをインストールした後,GUIのままUpdateしてはいけません.
GUIモードだとメモリが足りません.またSwapもほとんど使い切っているので,この状態でSwapを拡張しようとしてsudo dphys-swapfile swapoffとすると,フリーズします.
▶GUIモードでインストールしたときの状態でのメモリ状態
pi@raspberrypi:/etc/init.d $ free⏎
total used free shared buff/cache available
Mem: 427004 178600 154732 8384 154804 248404
Swap: 204796 174600 30196
Swapをほとんど使い切っているのが分かります.
▶raspi-configでログオンをCUIモードでの状態でのメモリ状態
pi@raspberrypi:~ $ free⏎
total used free shared buff/cache available
Mem: 427004 166984 111900 1140 201396 260020
Swap: 204796 0 204796
CUIであれば,Swapまでは使っていない状態です.
▶Swapを1024Kに拡張した状態でのメモリ状態
pi@raspberrypi:~ $ free⏎
total used free shared buff/cache available
Mem: 427004 168008 111148 1140 201088 258996
Swap: 1048572 0 1048572
Swapを拡張したことで,さらに多くのリソースを利用できるようになりました.
Swapはファイル・システムですので,SDカードへの速度が課題になります.ファイル・アクセスのクロックをアップすると良いです.
● Windows環境のGitを利用してcloneした場合の注意
Windowsの環境にLinux版のファイルをcloneすると改行が自動的に変更されるので,問題になります.設定を変更してください
PS> git config –global core.autocrlf false⏎
利用ソフト関連著作情報
● 大語彙連続音声認識デコーダJulius
Juliusは,京都大学や名古屋工業大学を中心に開発され,日本語の音声認識において高い精度を持ち,柔軟なカスタマイズが可能です.
Juliusの使用許諾はGPLではなく,もっと緩いものになっています.
・バイナリのみの配布を認める
・商用ソフトへの組み込み可能
・変更部分のソースは公開が望ましいが,非公開でも構わない
http://winnie.kuis.kyoto-u.ac.jp/pub/julius/license.html
筆者名:京都大学,情報処理振興事業協会(IPA),
http://winnie.kuis.kyoto-u.ac.jp/pub/julius/home.html
GitHub:https://github.com/julius-speech
● 音声合成ソフトVOICEVOX
LGPL v3 と,ソースコードの公開が不要な別ライセンスのデュアルライセンスです.
https://github.com/VOICEVOX/voicevox/blob/main/LICENSE
https://github.com/VOICEVOX/voicevox_core/blob/main/LICENSE
Copyright (c) 2021 Hiroshiba Kazuyuki
Version :0.21.1
URL: https://voicevox.hiroshiba.jp/
GitHub:https://github.com/VOICEVOX
● 参照している音声データ:VOICEVOX「櫻歌ミコ」
ページ名:櫻歌ミコ公式サイト みこみこうしき
URL:https://voicevox.hiroshiba.jp/product/ouka_miko/
● SPEECH_RECOGNITION
LICENCE:
GNU GENERAL PUBLIC LICENSE Version 2, June 1991
Copyright (c) 2014-2017, Anthony Zhang <azhang9@gmail.com>
All rights reserved.
URL:https://github.com/Uberi/speech_recognition