Interface編集部

キーサイトテクノロジーの6Gへのビジョン ~2025年5月28日ワイヤレスジャパン会場にて~
2025年5月28日,ワイヤレスジャパン会場にて,キーサイトテクノロジーの6Gへのビジョンが示された.
6Gは,現在普及が進んでいる5Gの次の世代となる第6世代移動通信システムを指す.2030年ごろの実用化を目指して世界中で研究開発が進められている.
発表者は同社6G担当チーフ・テクノロジストであるBalaji Raghothaman.
6Gが単なる5Gの進化ではなく,人工知能との融合によって新たな可能性を拓く「革命」であると捉え,その実現に向けた幅広いソリューションと専門知識を提供しているとする.また,6G時代におけるネットワークの最適化や予測に活用されるデジタルツイン技術の開発,検証も積極的に行う.
同社は6G時代のキーテクノロジーとして以下を挙げる
・新しい周波数スペクトラム技術
・AIを活用したネットワーク
・デジタルツイン
・新しいネットワークアーキテクチャ
・セキュリティとプライバシ
同社の提唱するデジタルツインとは.
単なる仮想空間上のシミュレーションにとどまらず,現実のネットワークやシステムを高度に再現し,その性能を評価・最適化するための強力なツールとして位置付ける.例:都市や工場などの形状を再現し電波伝搬をシミュレーションする.その結果をエミュレータに模擬させる.
デジタルツインを実現するツール
・PathWave Advanced Design System
高周波(RF),ミリ波,6Gで活用されるサブテラヘルツ帯における電子回路,アンテナ,基板の設計,シミュレーション,検証を行うツール.
・PathWave System Design
無線通信システム全体の設計,シミュレーション,検証を行うツール.
・Large Scale Network Digital Twin
都市規模や産業レベルの広大な通信ネットワークを仮想空間上で構築し,その挙動や性能をリアルタイムでシミュレーション,最適化するツール.
デジタルツインを利用して電波伝搬を解析,エミュレートした例.
左上がデジタルツインによる建物の再現.右下は電波伝搬をシミュレーションしているところ.
シミュレーション結果をフェージング・シミュレータに取り込み,基地局とスマホの間に入れる.
すると,実際のある地点において,建物の影響で電波受信がどのように影響を受けるのかを検証できる.
このテスト・ソリューションは5Gでも利用しているもの.左上が89600 VSA (Vector Signal Analysis) で,複雑な無線信号を周波数ドメイン,タイムドメイン,変調ドメインなどに分けて掘り下げて解析できる.6G時代においては,例えば受信した波形の解析にAIを利用することで,人や物の移動距離,移動速度などを検知できるようなるとする.
MWC2025(Mobile World Congress 2025)でデモンストレーションされたもの.
6G時代の重要な要素であるAIとワイヤレスセンシングの融合に焦点を当てている.
AIがワイヤレス信号を利用して環境の変化,物体,または人間の活動を検知する能力を強化する.
このデモンストレーションの図は,次の2つに分かれる.
1,信号の送信/受信/エミュレーション環境
2,AIによるセンシング解析プロセス
▲M9484C VXG…高周波ベクトル信号発生器.例えば既存の3GPP準拠信号などを生成しシステムに供給する
▲PROPSIM…無線チャネルをエミュレートする.現実の室内環境における電波の伝搬特性(反射,減衰,多重経路など)を精密に再現する.
▲Commercial O-RU…商用のO-RANに準拠した無線ユニット.M9484C VXGやPROPSIMからの信号を受信し,デジタル化してO-RAN Fronthaulインターフェースを介して送信する.
▲Optical Splitter…光信号を分岐させるデバイス.
▲S5040A…Open RAN Studio Player and Capture Appliance.Optical Splitterを介してO-RUからのデジタル化された無線信号(eCPRI形式など)をキャプチャし,その中の「Received IQ Samples(受信I/Qサンプル)」を取り出す.
▲Received IQ Samples…キャプチャされた無線信号の生データで,AIセンシングの最も基本的な入力となる.
▲Estimated Channel…受信したI/Qサンプル・データから、AIが無線チャネルの状態情報(CSI)を推定する.このCSIの微細な変化が環境内の物体や動きに関する情報を含んでいまる.
▲Train Model…AIモデルを学習(トレーニング)する.AIはチャネル変化のパターンと実際の環境内のイベント(例:人の動き)との関係性を習得する.
▲Position / Posture…学習済みモデルが,新しいデータから推定する最終的なセンシング結果.これにより環境内の人や物体の正確な位置や姿勢を特定し,新しい6Gアプリケーション(例:ヘルスケア,セキュリティ,スマートホーム)を実現する