2026年2月16日,共創による事業前進を目指す対話型の提案発表会「NEC Intra Ale Pitch」取材レポート

2026年2月16日,NECソリューションイノベータ(東京都江東区)において,共創型ピッチイベント「NEC Intra Ale Pitch」が開催された.
本イベントは,社内で生まれた新規事業構想を外部に開き,多様な視点との対話によって実装可能性を高めることを目的とした取り組みである.

■イベント概要

●目的

企業の新規事業は,社内検討の段階で止まり社会実装に至らないケースが多い.
本イベントでは,構想段階のアイデアを早期に外部へ公開し,批評・議論を通じて前進させることを狙いとしている.

特徴は「評価」ではなく「対話」に重点を置いている点にある.
採択・優劣を決めるピッチではなく,課題・仮説・実装方法を具体化する場として設計されている.

●参加者

会場には以下の立場の参加者が集まった.

・企業内新規事業担当者
・大手企業の事業開発部門
・スタートアップ企業
・AI・ロボット関連団体関係者
・コメンテータ(事業開発,コンサル,プロマネ)

単なるスタートアップイベントとは異なり,「企業内新規事業」と「スタートアップ」が同じテーブルで議論する構成が特徴的である.

●当日の流れ

1. 主催ラボ紹介

2. 事業ピッチ

3. 社外事業会社による事業推進ケースピッチ

4. スタートアップ・ピッチ

発表時間よりもフィードバック時間が長く設定されており,議論を主目的とした構成となっていた.

■イベント詳細

●2.事業ピッチ(10分ピッチ+30分コメント+会場質問10分)

NECソリューションイノベータ イノベーションラボラトリ 探索G Ambient Intelligenceチーム

テーマ:人とAIロボットの共生社会を実現するAmbient Intelligence(AmI)コア

同ラボは「新技術の獲得」と「新事業創出」を同時に担う組織であり,研究所と事業部門の中間に位置する役割を持つ.
発表では,人と共生するAIロボットの構想が示された.

背景として提示されたのは,介護・育児・労働が重なる将来社会である.
単に作業を代替するロボットではなく,人間の状況や意図を理解する存在が必要になるという.
そこで重要となるのが社会的受容性である.

ロボット普及の条件として次の3点が挙げられた.
・物理的安全
・心理的安全
・社会的文脈理解
特に「空気を読む能力」が不可欠とされ,人間の状態を推定するAI基盤の研究が紹介された.

ロードマップでは,公共空間 → 施設 → 家庭の順で普及を進める構想が示された.

フィードバックでは,社会受容性の定量化やビジネスモデルの具体化の必要性が指摘され,研究から事業への転換が主要論点となった.

●3. 社外事業会社による事業推進ケースピッチ(10分ピッチ+質疑応答・コメント10分)

東京電力パワーグリッド

テーマ:地域課題から始まる事業化プロセス

同社からは,小田原市での地域活性化プロジェクトが紹介された.

当初は通信インフラを活用した防災提案を行ったが,自治体の関心を得られなかったという.
転機となったのは,住民・商店街・自治体への継続的なヒアリングであった.
真の課題が「観光動線の分断」であると判明し,街歩き型イベントへと方向転換した.
結果として,想定を上回る参加者を集める成果を得た.

本事例では,企業の技術起点ではなく感情・ニーズ起点で事業を設計する重要性が強調された.

 

●4. スタートアップ・ピッチ

▲RestPass株式会社

トイレの空き状況検索・予約・決済を統合したサービスを紹介.
公共施設や商業施設における待ち時間問題の解消を狙う.

既存技術を組み合わせた実装型サービスであり,
行動体験の改善を価値として提示した.

▲メディフォン株式会社

外国人向け医療支援サービスを展開.
医療機関検索・通訳・相談をワンストップで提供し,
企業の人材定着にも寄与する仕組みを説明した.

AI活用による運用効率化も検討されている.

▲Solve AI株式会社

企業業務向けAIエージェント基盤を発表.
文書検索・分析・業務処理を統合し,単なるツールではなく業務そのものを自動化する方向性を示した.

▲株式会社EQUES

研究開発型AI企業として,規制領域でのAI活用(医療・品質保証等)の取り組みを紹介.
単なるAI提供ではなく,実装まで伴走するモデルを採用している.

▲susuROBO株式会社

会話型AIを活用したコミュニケーション支援を発表.
教育・高齢者領域での利用を想定し,自然な対話による行動変化を狙うアプローチが示された.

●まとめ

本イベントの特徴は,完成度の高い発表を競う場ではなかった点にある.

仮説段階の構想に対し,大企業,スタートアップ,研究者が同じ立場で議論する構造が作られていた.

新規事業の進行を妨げる要因として,

・顧客理解不足
・定量指標の欠如
・実装計画の曖昧さ

が繰り返し指摘された.各発表は評価されるのではなく,具体的な検証項目へと分解され,構想を「実行計画」へ近づける議論が中心となっていた.