低消費電力で高性能・高信頼 の組み込み システムに最適!
ラズパイ4互換シングルボードコンピュータ『ROCK4C+』

Okdo ROCK4 Model C+(以下,ROCK4C+)は,Rockchip RK3399-Tを搭載した,OkdoとRadxaが製造するシングルボードコンピュータ( 以下,S B C )です( 写真1 ).

 

搭載するRK3399-Tは,Cortex-A72を2コア,Cortex-A53を4コアをもつARMプロセッサのSoCです.ボード上には,4Kと2Kの2つのHDMI出力ポート,USBポート,PoE対応のGbEのLANポート,GPIOピンヘッダを備え,ストレージにはSBCでおなじみのマイクロSDカードに加え,信頼性の高いeMMCも利用できます.

 

Raspberry Pi 4B(以下,ラズパイ4B)と互換性を重視したコネクタ配置となっており,電源を完全オフできるなど組み込みシステムにうれしい機能を備えたSBCです.

 

写真1  高性能ARM SoCと多数のインターフェースを備えるROCK4C+

 

 

■ROCK4C+の目玉機能

世の中には数多くのSBC が流通しています.SBC の特徴は,Linux の上でパソコン同様のソフトウェア開発ができ,GPIO を使用した高い拡張性をもつことにあります.そのようなSBC の中でROCK4C+の特徴は次の3つになります.

 

(1) Cortex-A72とCortex-A53の2種類のプロセッサで構成されるbig.LITTLEアーキテクチャで,低消費電力ながら高性能で高い計算処理能力をもつ

(2)  eMMCが使用可能で,シャットダウン時の完全電源オフができるなど,組み込みシステムで便利な機能を備える

(3)  回路図や3 D モデルなどの技術情報が公開されていて,装置への組み込みが容易.利用可能な公式OS およびサードパーティのプロジェクトが豊富

 

 

■マルチコアで低消費電力・高性能なRK3399-T

● 処理性能はラズパイ4Bと同等

ROCK4C+が搭載するRK3399-Tは,2基のCortex A72と4基のCortex A53の6コアで構成されるARM SoCです.公式が提供するOSでは,A72コアとA53コアの動作周波数がそれぞれ約400MHz~1.5GHzと約400MHz~1.0GHzに設定されています.これは,ラズパイ4Bが搭載する4基のCortex A72の動作周波数600 MHz~1. 8 GHzに比べると,より低い動作周波数に設定できる一方で,最大動作周波数が控え目であるといえます.

 

最大動作周波数の違いが処理性能に及ぼす影響をベンチマークソフト「Geekbench6」を使って調べてみました.図1が測定結果です.ラズパイ4BとROCK4C+は共に4GB版を使用しました.結果を見ると,シングルコアのスコアでは,ラズパイ4BがROCK4C+より高い処理性能であることが分かります.一方で,マルチコアのスコアでは,両者の性能がほぼ同等です.SBCの使用用途がフル機能のLinuxが動くことが強みの組み込みシステムであることを考えると,複数のコアが連携したシステムの動作が期待されます.そのため,マルチコアのスコアを重視して,ROCK 4 C+の処理性能はラズパイ4Bと同等だといえるでしょう.

図1  ROCK4C+とラズパイ4Bの処理能力をGeekbench6で評価した結果.OCK4C+はラズパイ4Bと比べるとシングルコアではやや劣るが,マルチコアでは遜色ないスペック

 

 

●スレッド数が増えてもメモリのアクセス速度を維持

複数のアプリケーションやスレッドがマルチコアを活用して性能を発揮するのに欠かせないのがメモリのアクセス速度です.ROCK 4 C+はメインメモリとしてLPDDR 4 – 3200をデュアルチャネルで搭載しています.スレッド数が増えた際のメモリアクセス帯域を,ベンチマークソフト「Stream」を使って測定した結果が図2です.メモリ使用量は2288.8MiBに設定して測定しました.結果をみると,ラズパイ4 B ではスレッド数が増えると共にアクセス速度が低下しているのに対して,ROCK 4 C+では2スレッドから6 スレッド時のアクセス速度がほぼ同じであることがわかります.このことから,マルチコアの活用に十分なアクセス帯域幅が確保されているといえます.

図2 ROCK4C+とラズパイ4Bのメモリアクセス速度をStreamベンチマーク(Triad)評価した結果.ROCK4C+はラズパイ4Bと比べてスレッド数が増えてもメモリアクセス速度の低下が抑えられている

 

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一般に,プロセッサの動作周波数が低ければ低いほど消費電力が小さくなります.ROCK4C+では,big.LITTLEアーキテクチャの強みを活用してキメ細かく消費電力と必要な処理性能のバランスをとる運用で,低消費電力ながら高性能な計算処理を実現できるでしょう.

 

 

■組み込みシステムで便利な機能

● 信頼性が高いeMMCが利用できる

多くのSBC ではSD カードがメインストレージとして選択されることが一般的です.SDカードは手軽に使える反面,信頼性や転送速度が問題になることがあります.ROCK4C+では専用ソケットにeMMCを搭載して,高信頼で高い読み書き性能のシステムを構築できます.

 

● Linux上の電源断コマンドで完全電源オフ

スペック表などでは目立ちませんが,ラズパイ4 B と比べてROCK4C+が優れている点に完全なシャットダウン機能があります.ラズパイ4 B ではLinux 上で電源断コマンドを実行しても完全には電源が切れず,電力が消費され続けます.完全に電源断したければ独自でアドオン回路を作る必要があります.一方でROCK4C+ではLinux上の電源断コマンドで完全に電源がオフになります.そのため,バッテリを使って間欠的に動作するようなシステムを構築する場合でも,手軽に利用できます.

 

● 外部Wi-Fiアンテナにより設置の自由度が上がる

場所を選ばずSBCを利用するためにWi-Fiは必要不可欠な機能です.ROCK4C+には外部アンテナが付いていて,ケースへの組み込みや設置の自由度が高いのも製品に組み込む際に便利です.

 

 

■Radxaによる技術情報の公開

回路図や3Dモデルなど,ROCK 4 C+を製品に組み込んで利用する場合に必要な情報は,Radxa のWeb サイト( https://radxa.com/rock4cp)で公開されています.公式の標準実行環境としてDebian(Bullseye)のKDE版・XFCE版・CLI版,Ubuntu(Focal)のGUI版・CLI版,およびAndroid 11が提供されています.写真2はGUI版のDebian(KDE)を,写真3はAndroidを動作させている様子です.なお,DebianとUbuntuの各バージョンにおいて,起動時にメモリの使用量が最も少なかったのがUbuntuのCLI版で105MB,逆に,最も多かったのがDebianのKDE版で236MBでした.用途に応じて選ぶと良いでしょう.

 

その他,Wiki( https://wiki.radxa.com/Rock4/4cplus)に,インストールや各種ハードウェアを利用する手順などの情報,いくつかのLinux ディストリビューションやFreeBSD やOPNs e n s e,R e c alb o x などのプロジェクトが掲載されています.フォーラム(https://forum.radxa.com/)にユーザ同士のQ&Aが集まってる他,Discord にもRadxa のコミュニティがあり,ROCK 4C+ユーザ向けのチャネルで利用事例やトラブルシュートの方法などがやりとりされています.

 

写真2  KDE版を動作させている様子.ブラウザやターミナルなど一般的なアプリを利用できる

 

 

写真3  Androidを動作させている様子.日本語表示や日本語入力もできる.Wi-Fiもばっちり利用可能(ただし,Playプロテクトの認定を受けていないのでアプリやサービスの利用には制限がかかる)

 

■ROCK4C+は仕事で使えるSBC

ROCK4C+は,ラズパイ4B互換のSBCです.Cortex-A72とCortex-A53で構成されるbig.LITTLEアーキテクチャのARMコアは,アプリケーションシステムに合わせた低消費電力で高性能な運用に適しています.また,eMMCが使用できることや電源のシャットダウン機能,Wi-Fiの外部アンテナは,ROCK4C+を仕事の現場で手軽に使う手助けとなることでしょう.ROCK4C+は国内ではRSコンポーネンツ(株)から購入できます.梱包されている箱にはWi-Fiの技適シールも貼られていて,安心して利用できます.