スポーツ・センシング for2020
第30回
ネット操作OKのウェアラブル生体センサ

● 複数センサの時刻同期は重要
 現在,さまざまなウェアラブル・センサが存在しますが,それぞれのセンサが異なるデータ長であったり,異なるサンプリング・レートであることは当たり前です.
例えば計測レートを考えると,心電計は通常1kHz以上ですし,呼吸などは10Hzもあれば十分です.体温ともなると1分ごとでも十分です.
 これらのセンサを混在させて人を計測する際に,常につきまとうのが「同期」の問題です.無線化されていることもあり,ますますセンサ同士を同期して計測するのは難しくなっています.
● 時刻同期機能付きでネット操作OK のウェアラブル・センサ
 そこで筆者らは,無線接続されたさまざまなセンサを同時に計測するデータ収集アダプタ「センサハブ」を開発しました注1(写真1).ハブとしての機能の他,3 軸加速度センサ,心電図機能も持っており,使い捨て(ディスポ)電極を胸に貼るか,もしくは導電繊維など衣服と一体になったような電極を使って計測可能です.
 データ収集基板は東北大学開発の「飲む体温計」のデータももちろん収集できるようになっていますし,現在のところ呼吸センサもつながるようになっています.
 これらのセンサで取得したデータは全て2.4GHz帯を用いた独自無線ネットワークでセンサハブに集約され,内蔵メモリに記録されます(図1).
 センサハブはセンサ・コントロール・ユニットと共に用います.ユーザはセンサ・コントロール・ユニットにウェブ・ブラウザを使ってログインし,使いたいセンサを選択し,計測をスタート,監視できます.

● 時刻同期の仕組み
 センサ・コントロール・ユニットは,異なるサンプリング・レートで動く複数のセンサに,2.4GHzのWi-Fiもしくは920MHz帯の通信いずれかで時刻同期をかける役割を果たします.センサ・コントロール・ユニットでNTPなどの時刻サーバからの正確な時刻を得ていれば,センサ群は全てこれらの時刻のもとで計測が行われたことになり,後の処理がとてもやりやすくなります.
 タブレットやスマートフォンから計測や監視ができますので,とてもオススメです.利用してみたいセンサがあればお知らせください.

□参考文献□
(1) 錠剤サイズの「飲む体温計」動物適用実験に成功.
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/tohokuuniv_press_20190313_02_nomutaionkei.pdf
仰木 裕嗣(Interface2020年2月号 p.187より転載)