【USBコラム08】
同軸ケーブルとSTPケーブルの挿入損失

Type-Cの規格書には,ケーブル径と単位長さ当たりの挿入損失が記載されています.しかし,実際のケーブル特性と比較すると少々異なります.

 

同軸ケーブルの規格値と電磁界シミュレーションで求めた1m当たりの挿入損失を図1に,STPケーブルの規格書と電磁界シミュレーションで求めた1m当たりの挿入損失を図2に示します.

 

図1 同軸ケーブル挿入損失

 

 

図2 STPケーブル挿入損失

 

 

規格書で示されている挿入損失である図1a)と図2a)を見ると,12.5GHz 〜15GHzの曲線がやや不自然なことが分かります.

 

一方,電磁界シミュレーションで求めた図1b)と図2b)は,2GHz付近まではf に比例して損失が増加し,それ以降の帯域では周波数に比例しています.2GHz付近までは表皮効果により損失が増加し,2GHz以上では誘電損失による影響を表しており,物理現象に一致しています.実際のケーブルは,絶縁材の誘電正接や導体のメッキ処理などにより,電磁界シミュレーションの特性より若干変化しますが,設計の目安として利用できます.

 

表1表2 は,図1図2の値を表にしたものです.1.25GHzまでは,規格書と電磁界シミュレーションの値はおおむね同じですが,10GHz 付近ではやや異なり,電磁界シミュレーションの挿入損失の方は大きくなっています.

 

表1 同軸ケーブルの挿入損失

 

 

表2 STPケーブルの挿入損失

 

 

Type-Cケーブルはプラグを囲むフードの大きさ(幅と高さのみ,奥行きは規定がない)が規定されているので太いケーブルは接続できず,AWG30前後のケーブルが利用されています.電磁界シミュレーションのAWG30の5GHzにおける挿入損失を確認すすると,1mの長さでは同軸ケーブルが-5.5dB,STPケーブルで-4.5dBです.これにプラグの損失-1.6dB(=-0.8dB×2)を加えると,同軸ケーブルで-7.1dB,STPケーブルで-6.1dBとなります.Gen2のケーブル規格で規定された-6dBに近い値になります.

実際に市販されているGen2ケーブル長が1m前後になることは,このシミュレーション結果からも見積もることができます.

同軸ケーブルよりSTPケーブルの挿入損失が小さい理由は,差動ケーブルのPチャネルとN チャネル間の電磁的な結合により,信号が流れやすくなるためです.

 

 

池田 浩昭(書籍「USB Type-Cのすべて」コラム5.Bより)

 

 

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