無線通信デバイスでIoT開発を牽引するノルディック・ジャパン,2026年の取り組み

無線通信デバイスでIoT開発を牽引するノルディック・ジャパン,2026年の取り組み

〜Bluetooth Low Energyだけじゃない!Wi-Fiやセルラ,エッジAIで世界中からつながる〜

ジョン・ケニー
ノルディック・セミコンダクター
ジャパン・カントリー・マネージャー

■ノルディックとは

Q.ノルディック・セミコンダクターはどのような企業ですか

A.
ノルディック・セミコンダクターは1983年に設立された企業です。創業当初は無線分野ではなくASICを手がけるファブレス企業としてスタートしましたが、将来の無線通信の重要性を見据え,早い段階でワイヤレス分野へと軸足を移しました。その過程で提案した考え方や仕様が,現在のBluetooth Low Energy規格の基礎になっています。

Bluetooth Low Energyは当初から世界標準を前提に開発され,日本の大手企業も初期段階から多く参画してきました。現在も国際的な規格として広く使われ続けています。

Q.ヨーロッパ企業としての価値観や特徴は何でしょうか

A.
ノルディックはヨーロッパの企業らしく,環境や社会への配慮を非常に重視しています。自然資源が限られている背景から,SDGsへの取り組みやリサイクル,男女平等といった価値観が社会全体に根付いています。女性が技術や意思決定に関わることも,ノルウェー社会ではごく自然な考え方です。

こうした姿勢が評価され,ノルディック・セミコンダクターは2024年の実績評価に基づく2025年版のサステナブル企業ランキングに初めて選出され,大きく順位を伸ばしました。企業としての成長と社会的責任を両立させることを重視しています。

Q.日本法人はどのような位置づけですか

A.
現在,ノルディック全体の従業員数は1300人を超え,グローバルで成長を続けています。日本法人は約17年前に設立され,現在は6名体制です。今後は現状の数倍規模への成長を目標に掲げています。

その成長を支える上で重要なのが代理店との連携です。ノルディックは商流を代理店に委ね,技術的な議論やサポートは直接行うというスタンスを取っています。日本市場でも,代理店を積極的に活用し,パートナーと一緒に市場を広げていきたいと考えています。私自身も営業の一員として顧客の現場に足を運び,代理店と連携しながら活動しています。

■ノルディックの強み

Q.低消費電力無線に強い理由は何ですか

A.
ノルディックの強みは,無線技術そのものだけでなく,電源設計を含めたアナログ技術を重視してきた点にあります。無線通信ではRFが注目されがちですが,実際に消費電力を左右するのは電源周りです。1つの電池でいかに効率よく無線機能を動かすかという積み重ねが,現在の低消費電力性能につながっています。

Bluetooth Low Energy,セルラ,Wi-Fiといった全ての無線製品に,この思想が反映されています。

Q.電池レスやエネルギー・ハーベスティングへの考え方は

A.
将来的には電池駆動にとどまらず,電池レスの世界も視野に入れています。屋内光を利用したエネルギー・ハーベスティングなど,環境負荷の低い技術も実用段階に近づいています。

一方で,現時点では多くの機器が電池駆動であり,超小型電池を前提とした高効率な電源管理が不可欠です。ノルディックは,こうした用途に向けた高効率パワー・マネージメントICも展開しています。

Q.パワー・マネージメントICの役割は

A.
ノルディックのパワー・マネージメントICは,無線SoCの補助にとどまりません。充電制御や電源監視,電池残量の可視化などを高精度に行い,無線SoCと組み合わせることで,システム全体の効率を高めます。部品点数の削減や省スペース化にも貢献します。

■日本市場

Q.日本で注力している通信技術は

A.
日本市場ではBluetooth Low Energyを中心としたショートレンジ無線に強みがあります。加えて,ZigbeeやThread,さらにThreadを基盤とするMatterにも注力しています。特に電池駆動機器では,低消費電力で遅延の少ないThreadの優位性が高いと考えています。

Q.ノルディックのSoCはどのように使うのが理想ですか

A.

nRF52やnRF54といったSoCは、通信機能だけでなく、比較的リッチなプロセッサを内蔵しています。一見すると「ここまでの性能が必要なのか」と思われがちですが、通信専用ICとして使うのは、実は非常にもったいない使い方です。

従来は、ATコマンドを介して通信ICを制御し、アプリケーションは別のマイコンで処理する構成が一般的でした。しかし、ノルディックのSoCでは、アプリケーション自体を同一チップ上で動かすことができます。これにより、基板面積、消費電力、コストのすべてを削減できます。

この使い方を後押ししてきたのが、開発ツールやサンプルコードを早い段階からオープンに提供してきた点です。海外では、通信とアプリケーションを1チップで完結させる構成が主流になりつつあります。

 

■今後期待している分野は

Q.Bluetooth Low Energy以外の成長分野は

A.
ノルディックが注力しているのは、LTE-MやNB-IoTといったIoT向けの低消費電力セルラ通信です。高速通信を狙うのではなく、電池駆動で長期間動作するIoT機器に最適化しています。

この分野では、スマートメーターや小学生向け見守りトラッカなどが代表的な用途です。特に見守りトラッカでは、世界的に高いシェアを獲得しています。

Q.エッジAIへの取り組みについて教えてください

A.

AI分野において、ノルディックは少し異なる戦略を取っています。クラウドにデータを送って処理するのではなく、デバイス側、いわゆるエッジでAI処理を完結させる考え方です。

数Kバイトの超小型AIモデルをSoC上で動かすことが可能で、これは買収したNeuton AIの技術によるものです。例えば電動歯ブラシでは、3軸センサの情報をもとに口腔内を16ゾーンに分けて磨き残しを判定するAIが動作しています。この製品には10年以上前に登場したnRF52シリーズが使われています。

より重い処理が必要な音声認識などでは、専用のAIアクセラレータを搭載したnRF54シリーズを用います。これにより消費電力を抑えながら高度なエッジAI処理が可能になります。

■Nordic Tech Tour開催の狙い

Q.2026年1月,2月,東京・大阪でNordic Tech Tourを開催した目的は

A.

ノルディックでは、ほぼ毎月のように新製品がリリースされています。nRF54シリーズだけでもすでに3種類が出ており、今年中にさらに2種類が加わります。加えて、Wi-Fiやセルラの新製品も次々に投入されます。技術進化のスピードが非常に速いため、情報をまとめて伝える場が不可欠だと考えました。

Tech Tourを通じて伝えたかったのは、「ノルディックは近い存在だ」ということです。技術的な質問を直接投げてもらって構いませんし、代理店も含めて、どんな支援ができるかを知ってもらいたいです。

今回のTech Tourでは、代理店にも積極的に参加してもらい、展示や相談の場を設けました。日本法人は6名体制ですが、代理店6社がそれぞれ人を出してくれることで、20人以上の体制でお客様をサポートできました。

今回は東京と大阪での開催でしたが、今後は規模を拡大し、名古屋や九州などにも広げていきたいと考えています。東京では100人規模、大阪では80人規模で準備しましたが、本来はその倍程度の需要があると感じています。

Tech Tourは単発のイベントではなく、継続的な活動の起点です。各代理店が主催するイベントやセミナーと連動し、「毎月どこかでノルディックのイベントがある」状態を目指しています。来場者には、もてなしの気持ちを感じてもらえるよう、軽食やドリンクも用意しました。

ノルディックの周囲には、アンテナ・メーカ、コンデンサ・メーカ、電源関連メーカなど、多くのパートナーがいます。Tech Tourやウェビナでは、ノルディックだけでなく、代理店やパートナ、実際の成功事例も紹介していきます。この形であれば年に12回イベントを行っても、毎回異なるテーマや情報を提供できます。コミュニティと一緒に成長することが重要だと考えています。

楽しく、オープンで、近い存在であること。その雰囲気が伝わるメーカーであり続けたいと考えています。