Nordic Tech Tour Japan 2026レポートその2 セルラIoT向けSiP型LSIによる長距離IoT戦略

ノルディック・セミコンダクターは,Bluetooth LEやセルラIoT,Wi-Fiなどの無線通信向け半導体を手がけるメーカである.2026年初頭,同社の最新技術を紹介する「Nordic Tech Tour Japan 2026」が東京と大阪で開催された.本イベントでは,nRF54,nRF91,nRF70の各シリーズを中心に,最新の無線ソリューションが紹介された.

以下では,Tech Tourにおける講演内容を,テーマごとに紹介する.

セルラIoT向けSiP型LSIによる長距離IoT戦略

石原
ノルディック・セミコンダクター
テクニカルセールスマネージャー

写真1 講演の様子

ノルディック・セミコンダクターのセルラIoT向けSiP型LSI(LTE-M,NB-IoT)を中心とした長距離IoT戦略と,その中核デバイスであるnRF91シリーズ(特にnRF9151)の技術的特徴について講演した.なお,セルラIoTとは,LTE-MやNB-IoTといった携帯電話網を利用して,機器が直接クラウドへ接続するIoT通信方式の総称である.

LTE-Mは,4G LTEをベースにしたIoT向け通信方式であり,数百K~1Mbps程度の通信速度を実現する.車両や人,動物のトラッキング用途に適している.

NB-IoTは,さらに省電力・省帯域に特化した通信方式であり,数K~数十Kbps程度の通信速度で上り通信を中心とする.水道やガス・メータの検針用途などで利用されている.

図1 LTE-MおよびNB-IoTの位置付けと用途の違い

背景として,Wi-FiやBluetoothを用いたIoT機器は,出荷後に実際にネットワークへ接続され続ける割合が20~30%程度に留まるという課題がある.ルータ変更や設定の煩雑さにより,現場でオフライン化してしまう例が多いとする.

これに対しセルラIoTは,電源投入のみでクラウドへ直接接続でき,ゲートウェイ不要で高い信頼性を持つ点が強みである.近年はLTE-MやNB-IoTの普及により,低消費電力・低コストという条件も整い,市場は拡大局面にある.

中核製品であるnRF9151は,世界最小クラスのセルラIoT SiPであり,LTE-M,NB-IoT,GNSS,NTN,NR+に対応するモデムとArm Cortex-M33 MCUを1チップに統合している.RFフロントエンドやPMICまで含めて自社設計することで,超低消費電力と高い信頼性を実現している点が特徴である.

実例として水道メータ用途では,競合製品比で85%以上の消費電力削減を達成し,電池寿命を約9か月から10年以上へ延ばせるとしている.

図2 nRF9151の高集積アーキテクチャと低消費電力特性

また,グローバル展開を前提とした単一SKUでの各国認証取得や,中国本土を介さないサプライチェーン管理も重要な差別化要素である.これにより設計・在庫・保守の負担を大幅に軽減でき,長期供給が求められるスマートメータやインフラ用途に適している.

なお,単一SKU(Single SKU)とは,1つの製品型番だけで世界中に同一仕様の製品を出荷できるという考え方である.

通信カバレッジの課題に対しては,3GPP標準のNTN(衛星通信)が重要な役割を果たす.地球上の約75%は地上セルラの圏外であり,エネルギー,農業,物流,海洋用途では深刻な制約となっている.

nRF9151はGEO/LEO衛星を用いたNB-IoT over NTNに対応し,地上網と衛星網を意識することなく切り替え可能である.さらに,低遅延かつ自営網を実現するDECT-NR+にも対応し,工場やスマートシティ向けのメッシュ型IoTにも適用範囲を広げている.

ノルディックは,最低消費電力,最小サイズ,長期供給,グローバル接続を軸に,nRF91シリーズから将来のnRF92シリーズへとロードマップを描き,セルラIoTを社会インフラ・レベルで支える基盤技術として位置づけている.

図3 nRF91シリーズから将来世代へ向けたセルラIoTロードマップ