Nordic Tech Tour Japan 2026レポートその6 近距離無線通信向けのSoC,モジュール製品群

ノルディック・セミコンダクターは,Bluetooth LEやセルラIoT,Wi-Fiなどの無線通信向け半導体を手がけるメーカである.2026年初頭,同社の最新技術を紹介する「Nordic Tech Tour Japan 2026」が東京と大阪で開催された.本イベントでは,nRF54,nRF91,nRF70の各シリーズを中心に,最新の無線ソリューションが紹介された.

以下では,Tech Tourにおける講演内容を,テーマごとに紹介する.

近距離無線通信向けのSoC,モジュール製品群

明田 克也
ノルディック・セミコンダクター
テクニカルセールス

写真1 近距離無線通信向け製品群に関する講演の様子

ノルディック・セミコンダクターは,Bluetooth LEを中心とした短距離無線分野において世界的なリーダーであり,超低消費電力と高性能を両立するSoCを長年提供してきた.Bluetooth LEの最終製品認証数では業界トップクラスを維持し,IoT市場における事実上のデファクトスタンダードとして位置づけられている.

●次世代のnRF54シリーズ

ショートレンジ製品群の中核をなすのが,次世代のnRF54シリーズである.本シリーズはnRF52の後継として位置づけられ,22nmプロセスの採用や第4世代2.4GHz無線により,処理性能,電力効率,無線性能を大幅に向上させている.ラインアップは,高性能志向のnRF54Hシリーズと,汎用・超低消費電力を重視したnRF54Lシリーズに大別される.

図1 次世代ショートレンジSoC「nRF54シリーズ」の概要

●高性能志向のnRF54Hシリーズ

nRF54Hシリーズは,デュアルArm Cortex-M33やRISC-Vコプロセッサ,高速USB,CAN-FDなどの先進ペリフェラルを統合した高集積SoCである.複数ICを1チップで置き換え可能とし,高度な処理性能を求める機器に対応する.

図2 高性能志向のnRF54Hシリーズの構成

●汎用・超低消費電力を重視したnRF54Lシリーズ

nRF54Lシリーズは,処理効率を重視した設計により,最大50%の消費電力削減を実現するとともに,Bluetooth Channel Soundingへの対応など,電池駆動IoT機器に最適化されている.

図3 超低消費電力を特徴とするnRF54Lシリーズ

●開発環境 nRF Connect SDK

ソフトウェア面では,全製品共通で利用可能なnRF Connect SDK(NCS)が重要な役割を果たす.Zephyr RTOSをベースに,Bluetooth LE,Thread,Matter,Zigbeeなどの認証済みプロトコル・スタックを統合し,量産品質のコードを迅速に開発できる環境を提供する.さらに,DevZoneによる技術コミュニティや,オンライン学習基盤DevAcademyを通じて,開発者はノルウェー本社のエンジニアとも直接やり取りできる.

図4 nRF Connect SDKを中心とした開発エコシステム

なお,DevZoneとは,ドキュメント,Q&A,公式サポート窓口を一体化した,ノルディック製品専用の開発者ポータルである.

●エッジAIやセキュリティへの対応

近年はエッジAIにも注力しており,nRF54LM20Bに統合されたAxon NPUや,CPU実行型AIモデルによって,超低消費電力でのエッジAI推論を実現している.これらはSDKと統合され,センサ処理や異常検知などを無線SoC単体で実装可能にする.加えて,欧州のCyber Resilience Act(CRA)やREDなど,各国規制を見据えた製品セキュリティ機構もSoCレベルで強化されている.

総じて,ノルディックのショートレンジ製品群は,無線性能,低消費電力,セキュリティ,開発環境を一体で提供する点に強みがあり,次世代IoT機器の中核プラットフォームとしての完成度をさらに高めている.