Interface編集部
ailia SDKをラズベリーパイ4で試す 第1回 ラズベリー・パイOS(64ビット)にailia SDKをインストール
●ailia SDKとは
アイリア(Ailia Inc.)が開発,提供するエッジAI向け推論フレームワークailia SDKを,ラズベリー・パイ4上で動作検証します(写真1).
ailia SDKについて,開発元による紹介文を引用し,その概要を示します(1).
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「あらゆるデバイスに実装できる,独自開発のエッジAIフレームワーク」
現在,既存のAIフレームワークはデバイスやプラットフォームごとに細分化が進んでいます.私たちは,推論に特化したAIフレームワークであるailia SDKによって,クロスプラットフォームで一貫性のある推論環境を提供します.
さまざまな認識・結果を出力するAIモデルと,OSやハードウェアの実行プラットフォームを接続し,高速なエッジAIを実現する,世界最高水準のAI開発環境です.
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写真1 推論フレームワークailia SDKをラズベリー・パイ4で動かす
●ライセンス…個人は無償
ailia SDKはGitHub上で公開されていますが,公式サイトから本体一式をダウンロードできます.ライセンスはオープンソースソフトウェア(OSS)ではありませんが,以下の条件で無償利用が可能です.
・個人利用
・年間収益10万米ドル未満の小規模商用利用
法人利用(受託開発など)は無償利用の対象外となりますので,ご留意ください.また,ライセンスには30日間の評価期限が設定されており,期限後は再取得が必要です.
なお,pip経由で導入した場合は,30日ごとにライセンス・ファイルが自動で更新されるため,継続的な利用が可能です.
●ラズベリー・パイOSの選定とセットアップ
ailia SDKのチュートリアル(Python)では,下記のラズベリー・パイOSが指定されています.やや古い32ビット版である点にご注意ください.
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Raspberry Pi OS (32-bit) with desktop and recommended software(August 2020)
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なお,ダウンロードしたSDK内のインストール用ファイル(bootstrap.py)には,「arm64 v8a」フォルダを利用する旨の記述が確認できました.このことから,ailia SDKはAArch64(ARM64)にも対応していると判断できます.
そこで本記事では,より新しい64ビット版ラズベリー・パイOS(Debian 12 Bookwormベース)を用いて動作検証を行います.64ビット版のOSを使用する理由は,ailia SDKの性能を最大限に引き出すためです.64ビット環境では,32ビット環境に比べてより大きなメモリ空間を扱えたり,より効率的な命令セットを使用できるため,AI処理のような計算負荷の高いタスクにおいてパフォーマンスが向上します.
●ailia SDKのインストール
チュートリアルに従い,SDKのインストールを行います.実行結果はリスト1のとおりです.インストールログから,aarch64(64ビット)版のパッケージが自動的に選択され,インストールできることを確認しました.これにより64ビット版ラズベリー・パイOS上でも ailia SDK が動作することが期待できます.
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$ cd ~/ailia_1_5_0_trial
$ pip3 install ailia
Looking in indexes: https://pypi.org/simple, https://www.piwheels.org/simple
Collecting ailia
Downloading ailia-1.5.0.0-py3-none-manylinux2014_aarch64.whl.metadata (1.2 kB)
Downloading ailia-1.5.0.0-py3-none-manylinux2014_aarch64.whl (70.8 MB)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 70.8/70.8 MB 3.1 MB/s eta 0:00:00
Installing collected packages: ailia
Successfully installed ailia-1.5.0.0
$ python3 bootstrap.py
$ pip3 install
Processing /home/mike/ailia_1_5_0_trial/python
:
:
:
Successfully installed ailia-1.5.0.0
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リスト1 ailia SDKのインストール
●アイリアが公開しているサンプルの実行準備
インストールしたSDKが64ビットOS環境で正常に動作するかどうかを,アイリアが公開しているサンプル・プログラムを用いて確認します.
サンプル・プログラムはailia MODELSに含まれているため,これを利用します.
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$ git clone https://github.com/axinc-ai/ailia-models
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▲必要なライブラリのインストール
ラズベリー・パイ用として,リスト2のパッケージをインストールします.全てのライブラリが正常にインストールできました.
リスト2 必要なライブラリのインストール
リスト3 確認用サンプル・プログラムresnet50.pyを実行する
図1 確認用サンプル・プログラムresnet50.pyを実行…idx=0 category=963 [pizza, pizza pie] という推論結果が得られた
●サンプル・プログラムの実行
続いてチュートリアル(Python)に従い,確認用サンプル・プログラムresnet50.pyを実行します(リスト3).これも正常に終了したため,結果を確認します.
このプログラムは,同じフォルダ内に含まれている画像「pizza.jpg」に写っている物体を分類するものです.実行したところ,画像はピザだったため,idx=0 category=963 [pizza, pizza pie] という推論結果が得られ,分類も正確でした(図1).
サンプル・プログラムも正常に動作したことから,最新の64ビット版ラズベリー・パイOS上でもailia SDKをインストールし,利用できることが確認できました.
●まとめ
今回はラズベリー・パイ4のラズベリー・パイOS(64ビット)にailia SDKをインストールし,サンプル・プログラムの動作を確認しました.
ailia SDK には多くのAIモデルが用意されているため,今後は今回構築した環境および公開されているモデルを活用し,さまざまな機能や性能を評価していく予定です.なお,ailia SDKのチュートリアルでは古い32ビットOSの利用が指定されています.そのため,内容によっては今回の64ビットOS環境では動作しない場合も考えられます.その場合は,32ビットOSに切り替えて評価を進める予定です.
■引用文献■
(1)クロスプラットフォーム高速推論SDK,アイリア(株).
https://ailia.ai/sdk/
氏森 充(うじもり・たかし)
約30年間,(株)構造計画研究所にてIoT,ビッグデータ,機械学習,AI関連のシステム開発や実務応用に従事.退職後はLLM(大規模言語モデル)関連の情報収集や技術動向の調査・発信に注力し,雑誌「Interface」でもLLM技術に関する記事を執筆中.