AMDのSpartan™ Ultrascale+™ FPGAとVersal™ AIエッジシリーズ Gen2

AMDのSpartan Ultrascale+ FPGAとVersal AIエッジシリーズ Gen2

 

成長を続けるIoTエッジ市場,エンベデッド市場では,性能や電力効率に対する要求が強いのはもちろん,低コストや長期供給,先進技術への対応,設計の容易さなど,相反するさまざまな要求にさらされています.それらに対して,AMDではFPGAのもつ柔軟性と高速性,CPUのもつ設計の容易さ,AIのもつ先進の制御を適材適所で組み合わせて,市場の期待に応えています.
ここでは,コスト重視の用途に最適化した最新FPGA製品のSpartan Ultrascale+ FPGAと,エッジAIを1チップで実現する最新エンベデッドSoC製品のVersal AIエッジシリーズ Gen2を紹介します.

 

コスト重視の用途に最適なSpartan Ultrascale+ FPGA

AMDではコスト,電力効率,I/Oリソースなどの要求が厳しいローエンドのIoTエッジ市場向けとして,この3月にSpartan Ultrascale+ FPGAを発表しました.

16nmFinFETを採用したUltrascale+シリーズは,高性能かつ高電力効率を低コストで実現した製品です.Armコア搭載のZynq Ultrascale+ MPSoC,ミッドレンジ製品のArtix Ultrascale+ FPGAなどが幅広い市場で使われています.このSpartan Ultrascale+ FPGAはローエンド版として位置付けられ,一段と低コスト,高電力効率を追求しています.

一方,従来のSpartan 7シリーズで要望の多かったI/Oを大きく拡充しています.I/O数を増やすとともに,LPDDR4x/5, PCIe Gen4,MIPI DPHYなどにハードウェアで対応しています.また,Spartan 7シリーズに比べて消費電力を30%削減するなど,電力効率も大きく改善しています.さらに,NIST認証済みのポスト量子暗号など最先端のセキュリティ機能を搭載しています.

IoTエッジ市場では,多数のセンサとの柔軟な接続が要求される一方で,通信性能やセキュリティの要求も日々厳しくなっています.Spartan Ultrascale+ FPGAは,この市場で最も有力なFPGAデバイスとなっています

図1 Spartan Ultrascale+ FPGAの概要

 

デバイス長期供給の実績と,進化と熟成を続けるVivado開発環境

Spartan,ArtixなどAMDのコスト最適化ポートフォリオ(COP)製品は,産業機器など長期にわたって使用される市場で広く使われてきました.その中で,15年以上の長期供給を行ってきた実績があります.それとともに,適時に新モデルを市場に投入し,革新的ソリューションを提供し続けてきたことも大きな実績です.

Spartan Ultrascale+ FPGAでも,将来のニーズを取り込んだ先進の機能と性能を実現しており,15年以上のライフサイクルを約束しています.

図2 長期供給の実績と,革新的ソリューションの提供

 

Spartan Ultrascale+ FPGAが得られるもう一つの大きな利点は,開発環境の継続性です.AMDのVivado Design Suiteは,2012年のリリース以来一貫してFPGA開発をリードする強力なツールとして設計者に広く支持されています.ローエンドからハイエンドまでAMDの全てのFPGA製品をサポートし,シミュレーションから設計,検証までシームレスにサポートします.さらに,デバイスの高性能化や設計者のニーズの変化に対応して,常に進化と熟成を続けています.

今後数年の間に,全世界のIoT機器は数倍に増加すると予測される一方,FPGA設計者は30%不足すると予測されています.AMDのVivado開発環境は,既存設計者の開発効率を向上させるのはもちろん,さまざまな設計資産や開発ノウハウの継承と再利用,新規設計者の育成など,開発現場での設計者不足の悩みを解決することができます.

 

エッジAIアプリケーションを最適化するVersal AIエッジシリーズ Gen2

AMDでは,AI推論アプリケーションを中核とするエッジ機器を最適化する高性能,高効率SoCとして,Versal AIエッジシリーズ Gen2をこの4月に発表しました(図3).

Versal AIエッジシリーズ Gen2は,従来の3倍のワット当たりTOPSをもつ次世代のAIエンジン,Armの高性能APU(アプリケーションプロセッサ)とRPU(リアルタイムプロセッサ)により従来の最大10倍のスカラー演算性能をもつPS(プロセッシングシステム),I/Oや各種の前処理を柔軟に実現できる最大534kセルのPL(プログラマブルロジック)を1チップに統合したアダプティブSoCです.

また,非AI向けとして,AIエンジン非搭載のVersalプライムシリーズ Gen2も同時に発表しています.

図3 Versal AIエッジ Gen2 / プライム Gen2の概要

 

Versal AIエッジ Gen2 / プライム Gen2の大きな特徴は,高度に統合された1チップデバイスを用いて,複雑なエンベデッドシステムが要求される厳しい設計上の制約を迅速に解決できることです.

特に,自動車,ロボット,産業機器,ドローン,医療機器など,性能や電力効率と同時にリアルタイム性,大きさや重量,セキュリティや信頼性が強く求められる分野で,それぞれ十分な性能をもつ構成要素を統合しているので,最適な機能の切り分けと協調動作によって,複雑なAI駆動型エンベデッドシステムを確実かつ容易に構築できます.

 

Versal AIエッジシリーズ Gen2によるAI処理の最適化

例えば,エッジAIシステムでは,多数かつ多種多様なセンサの信号を入力して推論に必要な情報を作り出すための前処理フェーズ,前処理で得られた情報をもとに推論演算を行うAI推論フェーズ,推論結果を用いて意思決定やシステムの制御,ユーザとのI/Fを実現する後処理フェーズという3つのフェーズで処理を行っています(図4).

図4 AI駆動型エンベデッドシステムの3つのフェーズ

 

Versal AIエッジシリーズ Gen2は,この3つのフェーズのそれぞれを最適に処理できる構成要素として,前処理を最適に処理できるPL(プログラマブルロジック),AI推論を最適に処理できるAIエンジン,後処理を最適に処理できるPS(プロセッシングシステム)をもち,1チップのSoCでAI駆動型エンベデッドシステムを完結できます.

前処理を担当するPLは,システムによって異なるさまざまなセンサに対して柔軟にハードウェアを構成でき,センサとのI/Fと信号の前処理,複数のセンサとのセンサフュージョンを一手に引き受けられます.

AI推論を担当するAIエンジンは,高度な学習済みモデルを用いて,高速に推論演算を実行できます.

後処理を担当するPSは,最大8コアのArm A78AEコアと最大10コアのArm R52コアを搭載し,AI推論の後処理だけでなく,複雑な意思決定やシステムの制御,リアルタイムの処理を高度に実現できます.

AIエンジンなしのVersalプライムシリーズ Gen2は,このPSの高い演算性能を生かして,AIなしで最先端のアダプティブコンピューティングを実現できます.

さらに,DDR5/LPDDR5xのメモリI/F,PCIe Gen5,10Gbイーサネット,USB3.2,DP1.4,UFS3.1などの高速I/F,ISP(イメージシグナルプロセッサ),VCU(ビデオコーデックユニット),VPP(ビデオ処理パイプライン),2D/3D対応のGPUなど豊富なハードウェア機能を備えており,PLを利用せずに高度なI/FやHMIを実現できます.

 

さまざまな業界で求められる機能安全,セキュリティをサポート

Versal AIエッジシリーズ Gen2 / プライムシリーズ Gen2は,さまざまな業界でエンベデッドシステムに求められる機能安全やセキュリティの規格をそれぞれサポートし,その要求に応えることができます.この機能安全,セキュリティのための機能は多岐にわたっており,それらを柔軟に組み合わせることで,広い市場で使用することができます.

さらに,エンベデッドシステムを製品化した後での仕様変更,ユーザ定義の安全性やセキュリティ要件への対応,今後現れてくる新たな脅威や要求への対応も可能です.

 

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https://bit.ly/avnet-amd-workshop