作物とヒトとのインターフェース
農業センシングの世界
その5… 測るもの:屋外や温室の湿度
道具:湿度(相対湿度)センサ

 

従来の湿度センサ

 

●当初の湿度センサ…乾湿球温度センサ

  マイコンを使った温室の環境制御システムは,日本では1980年代の終わりごろから使われ始めました.その頃は,乾湿球温度センサで湿度を測ることが多かったです.
  乾湿球温度センサは,一方の温度センサの感温部にガーゼか不織布を巻いて,それを湿らせ,湿球温度を測定します.気温と湿球温度の温度差から湿度を計算するセンサです.湿球の水補給を忘れたり,ガーゼが汚れたり,少なくとも数日に1回は点検しないと正しく湿度が測れないことが多かったです.
 

●乾湿球温度センサから高分子膜静電容量センサへ

  今から15年程前からセラミックや高分子膜を使用した湿度センサが市販されるようになりました.しかし,その頃は単価が5万円ほどして,農業の現場に入れて湿度の計測制御を手軽に行えませんでした.
  その後,高分子抵抗湿度センサであるCHS-MSSが4,000円弱で販売され,農業用センサ・ネットワークで盛んに使用されるようになりました.最近の低価格&小型湿度センサの外観を写真1に示します.
 

写真1 昔は高価で大きかった湿度センサも最近では数百円で入手できて小型になってきたのでIoT 農業にもいろいろ生かせそう
左からCHS-MSS(TDK),SHT75(センシリオン),SHT15(センシリオン)と防水キャップ(上),SHT21( センシリオン),AM2302(Guangzhou Aosong Electronics),SHT31-DIS-B(センシリオン)をマウントしたキット.前回再掲

 

低価格&高精度「SHT31センサ」

 
  センシリオン社(スイス)の高分子静電容量型の最新型湿度センサSHT3xは,わずか2.5mm角の大きさで,1個1,000円を切るコストになりました.ラインアップを表1に示します.
 

表1 オススメ湿度センサSHT3x は精度や範囲によって幾つかラインアップが用意されている
センシリオン社のホームページより


 
  多湿環境で測定することもある植物生産分野では,濡れなどからセンサを保護するフィルタのあるSHT31-DIS-Fを使用するのか望ましいと思います.
  例えば,秋月電子通商でキット(AE-SHT31)が販売されています.一般用のSHT31-DIS-Bをマウントした基板とピン・ヘッダのキットが950円です(執筆2018年11月時点).
  I2C接続で使えて,動作電源電圧範囲が2.15 ~ 5.5V と広いです.Arduinoと16 × 2 の液晶表示器(AQM1602XA)を組み合わせると,写真2のように,高精度で相対湿度と気温を計測・表示できます.回路を図1に示します.
 

写真2 オススメ湿度センサSHT31 はI2C 接続タイプも多いので簡単に湿度計が作れる
AE-SHT31とArduino UNOと液晶表示器(AQM1602XA)の組み合わせ

 

図1 定番SHT31 を使った湿度センシング回路

 
  秋月電子通商から配布されているArduino IDE用のSHT31ライブラリを使うと,リスト1のように簡単なプログラムで動作します.
 

リスト1 写真2 のテスト計測をするプログラム例(Arduino IDE 用)
※画像をクリックすると拡大します


 

使用するときの注意

 
  このセンサを使用するときに特に注意しなくてはならないのは,溶媒蒸気やガス放出性のあるテープ,粘着剤,包装材由来の揮発性有機化合物にセンサが暴露されると,回復不能な計測値のズレが生じることです.精密に温度調節した高温乾燥処理をすれば回復するようですが,一般には難しいと思います.湿度計測装置の組み立ての際のプラスチック・ケースの材料や接着
材の成分,換気などに注意を払う必要があります.
 

植物生産分野で急速な普及が期待される

 
 このような低コストの高精度湿度センサを入手できるようになり,農業現場の湿度計測制御が気軽に行えるようになりました.温室などの植物生産施設は,多湿や多塵埃環境で湿度センサにとって良い環境とは言えず,短寿命になりがちです.でも,この価格ならば,1年ごとに電球みたいに交換して使用することが可能です.こうして,気温だけでなく,湿度を考慮した,より高度な制御や栽培管理が中小規模の温室にも導入されることで,生産性の向上が期待されます.

 


 

星 岳彦

星研究室・植物生産工学
植物生産の新たな情報化標準UECS研究会

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