スポーツ・センシング for2020 第28回
オープンソースな 脳波/心電/筋電測定用Arduino

● オープンソースなOpenBCI脳波/心電/筋電測定用Arduino
e-Sportsのブームによって,ウェアラブル・デバイスに日進月歩の進化がみられます.最近ではVRゴーグルなどの視覚デバイスのみならず,脳波を使って現実の機器を制御できる,ブレイン・マシン・インターフェース製品が続々と出てきています.オープンソース・ライセンスの製品も出てきており,OpenBCI(Open BrainComputer Interfaces)プロジェクトからは脳波(EEG),心電図(ECG),筋電図(EMG)などの生体電気信号の入力端子とアナログ・フロントエンドを持つArduino互換機が幾つか出ています(写真1,表1)(1)(2).このボードは生体電気信号の取得に適した特性の増幅回路やA-D変換回路などを実装している他,加速度センサも搭載しています.計測値はBluetoothで送信できる他,microSDカードに保存もできます.OpenBCIではPCからボードのデータを取得するための専用アプリケーションを用意しています.Sparkfunなどの通販サイトで売っている他のオープンソース生体電気信号用のデバイスにも対応しています.Arduino互換機ですので,開発環境などのさまざまなリソースが使えます.

● スポーツ・トレーニングを支援できる
脳波と筋電図,あるいは心電図と筋電図と言えば射撃やアーチェリーなどの的当て競技において,集中やリラックスといった脳の状態を知るために関心が高くなっており,トレーニング中にそれらの情報をフィー
ドバックするニューロ・フィードバックと呼ばれるトレーニングも既に行われています(3).
一流の選手と初心者には,うまくリラックスできているかどうかを示すアルファ波に違いが見られると言われています.脳波を使って集中しているかどうかを把握し,加速度センサで動きや呼吸の状態を捉え,そ
して筋電図によって発射動作の良否を計測する,といったことも十分にできそうです.まさに未来のトレーニングですね.実際のトレーニングで選手に計測値を伝える方法には,視覚,聴覚,圧覚などの候補が
ありますが,いまだこれといった決め手がないので,十分に研究の余地がありそうです.

□参考文献□
(1) OpenBCI, https://openbci.com/
(2) Ryan Spicer 他; REINVENT:A Low-Cost, Virtual Reality
Brain-Computer Interface for Severe Stroke Upper Limb
Motor Recovery, 2017 IEEE Virtual Reality, 2017.
(3) KooHyoung Lee; Evaluation of Attention and Relaxation
Levels of Archers in Shooting Process using Brain Wave
Signal Analysis Algorithms, 2009.

仰木 裕嗣(Interface2019年12月号 p.127より転載)