スポーツ・センシング for2020 第29回
高精度GPS でスキー選手の 滑走術を可視化

● 高精度GPS(GNSS)で選手の位置だけでなく技まで分かるようにする研究
日本機械学会のスポーツ工学・ヒューマンダイナミクス部門が毎年開催しているシンポジウムが2019年10 月末に福岡市で開催されました.
目を引いたのは東北大学の発表です.頭に取り付けた高精度GPS(GNSS)で,「スキー選手がレース中にどのようなポールの使い方をしていたかまで明らかにする」という研究です.
ラグビーやサッカーでは,既に選手の首あたりに取り付けたGPS(GNSS)によって選手の移動軌跡や速度などを記録して,それを使ったフォーメーションの解析,選手個々の疲労の解析などが行われています.

● 使用した高精度GNSS受信機
東北大学の宮本直人先生が開発を手がけるのは,携帯型高精度GNSS受信機 AT-H-02です(青葉テクノロジア).仕様を表1に,外観を写真1に示します.中に3軸加速度センサも搭載しています.連続動作時間は最大6 時間です.

● クロカン選手のポール技術を炙り出す
クロスカントリー・スキーは,両手に持ったポールを使って進みます.ポール技術には5 種類あります.

・ダブル・ポール
・ワンキック・ダブル・ポール
・ダイアゴナル
・ヘリンボーン
・クラウチング(ポールを使わない)
これらの技術はどの程度の速度を維持したいのか,あるいは斜度の程度など状況に応じて選手が選択します.
上記5つの技術は姿勢の高低に加えて右左の1周期に現れる頭の位置変化パターンに固有の特徴を持ちます.
これは頭に取り付けたGNSSが出力する標高データがセンチ・メートル精度であればこそ,なせる技です.
得られた測位情報と加速度センサの値を合わせて可視化すると,コースのどの地点で,どのポール技術で滑走していたのかが,レース後あるいはトレーニング後に分かるのです(図1).

□参考文献□
(1) 宮本 直人ほか;高精度GNSSを用いたクロスカントリースキークラシカルレースにおけるダブルポール滑走中の頭部動作計測,[No.19-306]日本機械学会シンポジウム:スポーツ工学・ヒューマンダイナミクス2019講演論文集.仰木 裕嗣(Interface2020年1月号 p.159より転載)

仰木 裕嗣(Interface2020年1月号 p.159より転載)