【USBコラム07】
各USB規格の損失配分

● USB 3.0(5Gbps)の損失配分

2008年にリリースされたUSB 3.0では,ホストとデバイス機器の配線およびケーブルを含めた伝送路全体の挿入損失を,2.5GHz(5Gbpsの基本周波数)で20dB(10%)と決め,ケーブルの挿入損失を7.5dB(42%),ホスト側を10dB(32%),デバイス側を2.5dB(75%)としました[図1a)].

 

USB 3.0が急速に使われる始めると,Micro-B搭載のデバイス機器が市場に出回りました.Micro-B搭載のデバイス機器の挿入損失は6~7dB(45~50%)と大きく,伝送路全体の損失が20dBを超えて23.5~24.5dB(6~7%)となってしまい,動作しない可能性が出てきました.

 

そこで,2012年にECN(Engineering Change Notice)を発行して,Standard-A−Micro-Bケーブルの挿入損失を3.5dB(67%)として,Micro-Bが搭載されたデバイス機器の挿入損失を6.5dB(47%)とすることで,全体での損失を20dBに抑えました[図1b)].

 

図1 USB 3.0 の損失配分

 

 

● USB 3.1 Gen1(5Gbps)の損失配分

USB 3.1 Gen1(5Gbps)規格は,USB 3.0を参考に伝送全体の挿入損失を20dBと定義しました(図2).ホスト,デバイス,ケーブルの損失配分ですが,Type-Cコネクタはホストとデバイスの両方で使用されるため,挿入損失はホスト,デバイスともに6.5dBとして,残りの7dBをケーブルに割り当てました.

 

Type-C機器(USB 3.1 で定義されたホストとデバイス)とLegacy 機器(USB 3.0で定義されたホストとデバイス)の組み合わせの場合は,Legacy機器側のStandard-Aは10dB で,Micro-B側は6.5dB,Standard-B側は2.5dB になり,Type-C機器は6.5dB になります.

ケーブルに許された挿入損失は,20dBからType-C機器とLegacy機器の組み合わせによる挿入損失を引いた残りになります.Standard-A−Type-Cケーブルの場合は3.5dB,Type-C− Standard-BケーブルとType-C− Micro-B ケーブルの場合は,Standard-A−Type-Cケーブルの挿入損失を参考に4dB(63%)と決めました.ケーブルの挿入損失を4dBに抑えることにより,Legacyデバイス機器の挿入損失を,最大9.5dB(33%)まで許容できるようになりました.

 

図2 USB 3.1 Gen1の損失配分
転送速度が5Gbps(2.5GHz)のとき

 

 

● USB 3.1 Gen2(10Gbps)の損失配分

図3に示すように,Type-CのGen2の5GHzにおける挿入損失は,ホストとデバイスの全ての機器を6.5dB,ケーブルを4dB(63%)としました.10GHzの挿入損失も同様に,コネクタに関わらずホストとデバイスの全て機器を一律8.5dB(38%),ケーブルは6dBとしました.

 

10GbpsはUSB 3.1からなので,10Gbpsに対応したホストやデバイスの機器の挿入損失は,コネクタによらず5Gbps(2.5GHz)で6.5dB,10Gbps(5GHz)で8.5dB 以下としなければなりません.また,Legacyコネクタが実装されているからGen1(5Gbps)までの転送速度,Type-Cが実装されているからGen2(10Gbps)対応機器という訳ではありません.実際は,10Gbps対応のホストやデバイスの機器を設計するときは,Legacy コネクタを選択することは考えにくく,Type-Cコネクタを搭載するでしょう.

 

したがって,一般論としては,LegacyコネクタはGen1(5Gbps)まで,Type-CはGen2(10Gbps)と考えても差し支えありません.一方で,Type-C自体は,Full-Speed(480Mbps),Gen1(5Gbps),Gen2(10Gbps)のいずれか,もしくは全ての転送速度に対応することになりますので,コネクタの形状から転送速度は決まりません.

 

図3 USB 3.1 Gen2 の損失配分
ホストとデバイス機器は,2.5GHz で6.5dB 以下,5GHz で8.5dB 以下にする必要がある

 

 

● Type-C LegacyケーブルにはGen1 に対応する規格がない理由

ここで,やっとType-C LegacyケーブルにSuperSpeedにGen1に対応する規格がない理由を説明する準備が整いました.

 

図2図3の損失配分を比べると,Type-C Legacy ケーブルの2.5GHzにおけるGen1とGen2の挿入損失は,Standard-A− Type-Cが3.5dB になる以外は全て4dBです,

 

したがって,Type-C−Legacyコネクタの組み合わせの場合はGen1までのサポートといえ転送速度が5Gbpsなだけで,Gen2ケーブル相当の挿入損失が要求されるため,Gen1の規格を作る意味がなく存在しません.

 

USB 3.2 も,USB 3.1と同じ損失配分で定義されています.

 

 

池田 浩昭(書籍「USB Type-Cのすべて」コラム5.Aより)

 

 

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